「日本人インストラクターを探してるらしいけど、興味ある?」
インドネシア・バリ島でインストラクター試験に合格した直後、当時お世話になっていたショップのオーナーから話をもらった主。
『そもそも新婚旅行くらいでしか行く機会がないやろうし…』という何とも微妙な動機であったが、トントン拍子で話が進み一月後には上陸していた。
それが今回のお話。
インド洋に浮かぶ島国、モルディブ共和国。
もちろん、主の海生活が始まった場所。
名前は知ってはいるけど、どんな国なのかはあまり知られていない。
そんなモルディブの海をお伝えします。
そもそもどこにあるのか?どんな国なのか?
モルディブ共和国 -Republic of Maldives-
地域や都市だと思われている方も多いと思うが、独立した国家。
インドとスリランカの南西、インド洋にある26の環礁と約1,200の島からなる島国。
とはいえ、その内人が住んでいる島は約200ほどと言われている。
だが他の国とは違い、観光で行くことのできる場所がかなり限られる。
最近でこそローカルの島にゲストハウスが建ち始め、以前より気軽に行くことができるようにはなったが、そこで出来る遊びはまだまだ少ないように感じる。
そして国民のほぼ全ての人がイスラム教を信仰しており、酒類や豚肉の販売はもちろん、持ち込みも厳しく制限されている。
では、どこで滞在するのか?何ができるのか?
多くの人が行くのはリゾート。
それも島まるまる一つをリゾートとし、宿泊施設やレストラン・バーはもちろん、スパやウォーターアクティビティが楽しめる。
そしてこのリゾートでのみ、酒類の販売や提供が許されている。
『だったらローカルの島に滞在して、リゾートに遊びに行けばいい。』と思われるかもしれないが、それができない。
ゲスト、スタッフ含めどれだけの人間が島にいるのか、常時把握しておかないといけないらしく、島に入るのも、他の島に行くのも許可が必要になる。
だからこそ安全面を気にする必要なく、安心してリゾートステイが楽しめる。
『モルディブ=高級』というイメージは、そのためである。
ダイビングスタイル
モルディブでのダイブトリップは、大きく二つに分けられる。
一つはダイブサファリ。
4-5日の間、大きなボートに滞在しダイビングをがっつり楽しむ。
メリットとしては、常時日本人スタッフが乗船しているショップがいくつかあり、
外国語に不安のある人でも大丈夫。
また就寝中にも移動するので、環礁を跨いでそれぞれ違ったダイビングを楽しめる。
もう一つがリゾートステイ、主が働いていたのもこれ。
リゾートに滞在しながら、ダイビングを楽しむ。
こちらのメリットは、もし一緒に行く人がダイバーでなくても、午前はダイビング午後は一緒にスノーケルやビーチでゆっくりなど、楽しみ方が多い。
体験ダイビングをすることももちろんできる。
注意点としては、ダイブショップはもちろんリゾートも、日本人スタッフがいると言っていても休暇などで不在のことがある。
個人で手配する場合でも、代理店を通す場合でもしっかりと確認する必要がなる。
肝心のダイビングは?
どんな海?何がいる?…とよく聞かれるが、
どの国どの地域でもそうだがこのモルディブの海、環礁によって全く違う。
なので、今回は主の滞在していた『南アリ環礁 – South Ali Atoll』を紹介する。
海のルールとしては、オープンウォーターダイバーは最大深度20mまで。
それ以上のレベルでも全てのダイバーが深度30m、時間も60分までと決められている。
これはモルディブ全土で共通。
そして、この環礁の最大の魅力と言えば…
実はジンベエザメは上の写真の通り、スノーケルで見ることができる。
なので、ダイバーでなくても充分にチャンスがある。
というのも、水面でも水中でも、魚類の泳ぐスピードについていくことはできない。
そのため、発見したら進行方向にボートで先回りをして、水面で待つという方法をとる。
『ジンベエの進行方向を遮ってはいけない』や『触ってはいけない』など、ルールが厳しくあるが、エントリーする前に必ずガイドが説明してくれるので守ってほしい。
運がよければ、自分たちのボートだけで1時間以上も一緒に泳げることも。
そして…
60分のダイビング全部を使ってマンタを見ることもあるし、時期によっては水面近くで100枚以上泳いでいることも。
こちらもスノーケルトリップでも見るチャンスがある。
20年ほど前に大ダメージを受けた海
1997-98年に起きたエルニーニョ現象で、多くのサンゴが死滅してしまったこの海。
主のいた2013-15年でも、瓦礫になってしまったサンゴが広がっていた。
それでも、毎年少しずつ新しい珊瑚が成長しており、大きなテーブルコーラルやウミウチワ、壁一面に生息している色とりどりのソフトコーラルが目を楽しませてくれる。
その他にも、何千匹ものタカサゴの群れが一斉に逃げるときの音。
穴の中や水底で眠っているネムリブカやナースシャーク。
隊列を組んだモビュラやイーグルレイの群れ。
鮮やかな青色の体をした、ブルーサージョンパウダーフィッシュ。
基本的にワイドな楽しみ方が多いものの、固有種のモルディビアンアネモネフィッシュや、稀にフリソデエビやニシキフウライウオなども隠れている。
さらに島と島の間のチャネル(channel)と呼ばれる、外洋と内洋の境。
潮の流れが強いため、通常では潜ることはしないのだが…
ここを水中スクーターで突っ切っていく。
『No Current, No Action』とモルディビアンスタッフは言っていたが、その通り。
流れのあるところに魚は集まる。
強いほど、動きが活発になる。
周りはホワイトチップ、ブラックチップ、グレーリーフだらけ。
運がよければレオパードシャークやギターシャークまで。
※このダイビングはどこでもやっているわけではないようです。
また、水中スクーターを使う際には講習を受ける必要があります。
モルディブでのダイビングは難しい?
先述したように、リゾートでは体験ダイビングもできる。
ただ基本的にはハウスリーフ、船で行くダイブサイトには行くことが出来ない。
…まあ、このハウスリーフでも充分に楽しめてしまうのだが…
『モルディブはドリフトダイブ』といった認識を持っている方もいらっしゃるが、南アリに関してはドリフトというドリフトはあまりない。
というのも多くのダイブサイトが1つのピナクル、水中のサンゴの根。
大きいもので100m、小さければ40mほどの大きさしかない。
だが流れが強いのはよくあること。
そして全てがサンゴのため、アンカーを描けることができない…
ということは流れが強くてもフリー潜行。
なので主のいたショップでは、
・モルディブでのダイビングが初めてのダイバー
・半年以上のブランクがあるダイバー
・ログが50本以下のダイバー
は必ず。
満たしているダイバーであっても基本的には、ハウスリーフでのチェックダイブをして、その後インストラクターのokがないとボートに乗せることができなかった。
おそらく、ほとんどのリゾートにあるショップが同様のルールを設けているはずである。
なので、ダイバーとしては『すぐにでも行ってもらいたい海』であるものの、
『しっかり経験を積んでから行ってもらいたい海』でもある。
そう、あとはナイトロックスのタンクが無料なこと。
行く前に講習を受けて行かなくても、現地ですぐに使い始めることができる。
講習を受けたらダイビング料金が割引になるようなショップもあり、現地で講習と試験を受けるのも大いにアリ。
元スタッフの裏話
「モルディブで生活なんか最高!なんで帰ってきたの?」と聞かれる。
カーテンを開ければ、空と海の境目がわからないくらいの青。
島にはヤシの木が育ち、年中快適な気候。
…というのは外から見た姿。
主のいた島は、東西に歩いて5分、南北は1分もかからない小さな島。
もちろん、違う場所や島に気軽に遊びに行くことなんかできなかった。
また、スタッフは島の中心にある5mほどの塀に囲まれたスタッフエリアで生活。
多くがインド・スリランカ・バングラデシュから来ているため、中は南アジアそのもの。
ダイブスタッフはショップの2階に部屋があり、このスタッフエリアではなかったが、階段を降りたらゲストがいる。
主は休みの日は食事以外、部屋に篭りっぱなし…
そしてその食事。
これもダイブスタッフは、朝と昼はビュッフェレストランでの食事が許されていたが、夕食はスタッフ用の食堂。
基本的には何かのカレー。
そしてレストランで残った、伸びたペペロンチーノと冷めたチキンナゲットを頬張る。
月に1回ほど。
バターチキンマサラが出たときには、先に行ったスタッフからメールが。
『早く来んとなくなるぞ!』って。
ちなみにScuBarのバターチキンマサラ、ここのレシピを参考にしてます。
僕より前にモルディブで働いていたイントラのアドバイスは、『監獄やぞ』。
主の唯一の楽しみは、半年に一回の休暇で食べる空港のバーガーキングでした。
とはいえ、なんやかんやと20ヶ月
スタッフにもゲストにも恵まれた、このモルディブでの生活。
今のインストラクターとしての思いも、大部分がここで作られました。
島を離れた理由も、『日本人ゲストが少なくなってしまったから』と、決してイヤで離れたわけではありませんでした。
なかなか行くだけでも敷居の高いモルディブ。
でも『ハワイやグアムに新婚旅行に行くなら、モルディブ行け!』と思ってしまいます。
いや、ハワイもグアムもええんやろけど。
行こうかと悩んでいる方。
ScuBarでなんぼでも主が相談に乗ります。
そして、帰国後の報告をしてもらえれば、なんぼでも羨ましがってやります。
新婚旅行は絶対にモルディブに戻ると決めている主。
それが実行されるのはいつになることやら…