『弟子の弟子は孫弟子、なら師匠の師匠は?』


ということで、昨年に続き今年も行ってきました岩手・三陸。

ただただ流されて遊んだだけで産卵は確認できなかった昨年。
一眼、ドライスーツ、三陸の海と初づくしのダイビング。

そしてあの災害から8年半経った現在の様子。


三陸の海といえばもちろん、主をダイビングの世界に陥れたあのお方。
みちのくダイビング Rias -リアス-のクマさんに今年もお世話になりました。


全身、特に腹筋の筋肉痛で帰ってきたこの旅。
少しですが、紹介していきたいと。

匍匐前進、そして待機

鮭の遡上。

産まれた場所に帰り、新しい命を産む。
そして、その命を終えていく。

今年も矢作川に、産卵のためたくさんの鮭が帰ってきていました。


川沿いに到着し、上から覗くだけでも一帯に広がる群れ。
いたるところで水面から出てしまうくらい、激しく産卵活動をする鮭。

11月の天気のいい日とはいえ紅葉の始まる気温、そして川。
ドライスーツの下にもしっかり着込み、いざ入水。

流れの下から川底を這いながら、流れに逆らい少しずつ近づいていく。


川底を少しずつ尾で掘っていき、オスがメスに産卵を促している。
大小の石の川底のため、尾もその周りもボロボロになっていく。

自分の子孫を確実に残そうとするためか、時折近づいてくる他の鮭に噛みつき追い払う。
中には頭部のほとんどの皮がめくれ傷ついているものも。


警戒させないよう、メスに狙いを定めて近づき、じっと待つ。

気がつけば周りを鮭に囲まれていた。
分厚いスーツを着ていてもわかるほど、身体にぶつかってくる。


そして待つ。


さらに待つ。

時間を忘れ、寒さも忘れ、その命の行動を眺めていたそのとき。
スッとメスが、自ら掘った穴の斜面にお腹をつけた。

その瞬間、周りにいたオスたちが一斉に集まってくる。
直後に集団の後方が白く濁り、その中に舞うオレンジ色の球体。

みな口を大きく開け、文字通り必死の形相で産卵し放精する。
これが最期だとわかっているのであろう。


周りには活動を終え、力尽きた者たちが横たわっている。
その亡骸は分解され、また新しい命を育てる栄養分となっていく。

震災後の三陸の海

三陸ボランティアダイバーズの代表として、震災直後から現在も活動を続けているクマさん。

この海がどんな海なのかはもちろんだが、震災から日が経った現在の姿はどうなっているのか見てみたく、無理を言って鮭班とは別に潜らせてもらった。


浪板海岸
水温 : 16℃
透明度 : 8m

天気も良く、11月上旬とはいえ暖かかったこの日。
ドライスーツという不安要素を抱えながら、ビーチからエントリーしていく。

エントリー直後、まさかのダンゴ初遭遇。
ワイドレンズのため、全く撮れず…

この一帯の海の復興作業は、海底の瓦礫等の除去はほぼ終わっているとのこと。

ただそれでも、防波堤沿いを沖へ進むと災害の爪痕が見えてくる。

津波の引き波によって崩れた、以前の防波堤。

引き上げることもできなくないが、今は漁礁にもなっているためそのままにしている。



また現在の大きな活動の一つに、藻場の再生・磯焼け対策をされている。

この日も道中、ウニの間引きを行っていた。

昆布の色が変わっているところが胞子嚢、状態は良さそうでクマさんも嬉しそうだった。


また夏場にはこの一帯にアマモが育ち、日光が入ってとてもキレイとのこと。
来年は鮭やなしに、夏場に行こうかな…。



瓦礫の除去作業がある程度終わったとはいえ、これまでには無かった問題が多く起きてしまっている三陸の海。
以前のような状態に戻るには、まだまだかかりそう。

だが『自分たちの手で綺麗な海を取り戻していく』という思いで、陸でも海でも活動を続けて行くとクマさんは仰っていた。

大きな被害を受けた陸前高田の今

昨年の同時期に、初めて見た陸前高田の状況。
ちょうど1年経ち、少しずつだが確実に再興に向け進んでいた。

現在も山から運んだ土砂で盛り土をし、そこに建造物を建て始めている。


そして、つい先日オープンしたばかりの『東日本大震災 津波伝承館』。

それほど大きいスペースではないのだが、これまでの歴史で何があったのか。
そしてあの日の状況、またこれからどう備えていくべきか、など非常に多くのことが語られ、展示されている。


正直なところ、中を回っていて非常に心苦しくなってしまったのだが、この地に立ち寄る機会があれば、時間を取って是非足を運んでもらいたい。

津波で流されてしまった千本松原。
今は植樹を行い、少しずつ育ちはじめていた。

この海でも、三陸ボランティアダイバーズとして磯焼け対策の活動を行っている。

ブログだけでは伝えきれない今回の旅

今年の岩手も多くのことを見、聞き、感じた旅となりました。

ただ悩んで書いたにも関わらず、1割も伝えられていないと感じております。


もっと話を聞いてみたいという方は、ScuBarで主に直接聞いてください。

そして活動に興味を持っていただいたのなら、是非三陸ボランティアダイバーズにコンタクトを取ってみてください。


何十年も前から言われ続けている、東南海の地震。
私たちの土地も他人事ではありません。

いつ起こるのかはわからない。
そのときのために何をしておくべきか、起こってしまったときにどうするべきか、考えておかないとと思っております。

今年の最終日も、漁港での仕事に同行させてもらった。

この日は、定置網の状態の確認。
主は飛行機のため潜ることはできず、というより潜ると邪魔になるだけかな…


時期によっては、作業ダイビングを手伝うこともできる。
レクリエーショナルダイブとは違った楽しみ方。


クマさんは言う。
『レクリエーショナルと作業ダイブ、なぜ分ける必要がある?どっちもダイビングだ。』

漁業をされている人たちと連携を取り、また新しい活動を始めています。