ダーウィンの海を目指しオーストラリアに渡った主。
シドニー滞在後、車と軍資金の調達のために仕事探しで転々とすることに。

そしてたどり着いた町は…

『渓谷』という初めて目にした地形

-Katherine, Northern Territory-

仕事があるかもとのことで小さな田舎町に来てみたものの、なかなか見つからず。
スーパーや宿にある掲示板を確認しては、電話してみる毎日。

こんな小さな町にも、仕事を探している奴らが集まっていた。


主のオーストラリア滞在のハイライトの1つでもあるこの町。
もし渡航を考えているのなら、ぜひ行ってもらいたい場所でもある。

…ただし、乾季に限る。


仕事が無いということは、時間はある。
もちろん疲れていなくても、喉は乾く。

4人で1ケース30本入りのxxxxを購入し、「毎日少しずつ飲むんやで!」と言いながら一晩で飲みきってしまう毎日。
あるとき1人が「明日gorgeに行くけど、一緒に行く?」とのこと。

gorgeとはなんぞや?と思いながらも、遊びに行くようなのでもちろんyes。
翌日40分ほどバスに乗り、到着したのがgorge=渓谷という大自然だった。

知識は、あればより楽しめる。無ければ感動がある。


子供ができたら、その子がある程度大きくなるまで『海』という存在を隠したい。
もちろん友達もできるし、テレビなどもあるから無理なことではある。

だがそれができたなら、大きくなった後に「見ろ、これが海だ」と言って見せたい。
初めて『海』というものに触れた子供は、どんな顔をするんだろう?

言い出しっぺのオランダ人に、遠足のときに歌うという歌を教えられ、
それを口ずさみながらトレイルを歩いていく。

キャサリンの町も、少し中心部から離れると平原と砂漠の間のような感じ。
この渓谷の入り口もそんな感じだったが、少しずつ景色が変わっていく。

岩肌が見え始め、それが山のようになり、いつの間にか岩壁に変わる。
踏みならされた道も、だんだん石が大きくなり、気を抜けば足が取られるように。

ふと丘に登って見た景色は、まさに大きな爪で引っ掻いたような後になっていた。

何万年もかけて出来上がった地形。
人間では作り得ないもの。
本当にそう感じることのできる。

主にとって、『感動』した場所の一つである。

トレイルの終着点は、小さな水の流れが大きな流れに合流していた。

英語は話せる。ただ完全に『グッダイマイト』…

2週間ほどでキャサリンにも見切りをつけ、さらに移動。
そしてたどり着いた田舎町で半年間過ごすことになる。

ワインの名産地、もちろんある仕事もブドウ畑。

-Margaret River, Western Australia-

冬がイヤでシドニーから北を目指したはずなのに、結局冬に逆戻り。


西オーストラリア州の都市、パースからさらに南に300kmほど。
オーストラリアでも有数のワインの産地。

郊外は一面のブドウ畑、そして車で1時間ほど走れば夕日の見える海岸に。

ダウンタウンといえば信号などなく、パブも2件あるだけ。
車で走っていると、パブのテラスで飲んでいるボスから電話がかかってくる。
「前を通ったなら、顔出さんかい。飲むぞ。」と。


誰の車が通ったかすぐわかってしまうくらい、小さいコミュニティ。
さらに主が手に入れた車が、緑の中を走り抜けてく真っ赤な…フォード。

そらすぐにバレますわ。

犬の叫び声とともに地響きが鳴り響き、
目をやるとカンガルーが犬に追いかけられている。
それが珍しくなくなってしまう生活。

やっぱり郊外に住むのが好きみたいな主。
ダウンタウンから歩いて15分の住宅街にある、平屋の一軒家の一室。

家のオーナーは、親父くらいの年齢の気のいいオージー。
もちろん言葉は、ただでさえ訛っているオージー・イングリッシュ。
しかもど田舎なので、余計に何を言っているのかわからない。


ただ生活をしていると慣れてくるもので、半年もいれば会話が途切れない。
聞き返すことも返されることもほとんど無くなっていた。

ということは、当時の主の話し方も相当訛っていたと思われる…

ルールは簡単『1 hand, 2 butts』

ここで最初に得た仕事は、ブドウの木の剪定だった。
しかしこれがなかなか難しい。


日本のぶどう狩りの農園では、木は頭上まで伸びているが、
ワイン用のブドウの木には、腰と目線くらいの高さにワイヤーが張られている。

そして下のワイヤー付近まで伸びた幹から、2本の枝だけをワイヤーに巻きつけ、
その枝から、さらに枝が分かれて上のワイヤーまで伸びている。

前年度の収穫後からそのままのため、枝を切ってはワイヤーから外していく。
だが絡みついた枝は、思いの外しつこく簡単には外れてくれない。


給料は歩合制、ブドウの木1本あたり25〜60セントほど。

時に、気温は0℃を下回り、雹が降るため中断したり。
時に、歩合が安すぎるとボイコットして、ビールを買いに行くやつがいたり。

それでも、ただただハサミを握りしめて一心不乱に切っていく。

手入れした木から、春先には芽吹き始める。

アフター5ならぬ、アフター3の楽しみ方

朝6時ごろから仕事のため、終わるのも早い。
金曜日なんかは、13時には終わることも。

そんな生活の中、ワイン畑があればワイナリーがある。
50件以上あるらしく、もちろん週末には片っ端から飲みに行く。


さらにこの町には、ワイナリーだけでなくブリュワリーも。
休みの日だけでなく、仕事が早く終わった日には寄って帰る。

春になり暖かくなりだした時期。
芝生の上で寝転がりながら飲む、デカいグラスに入った黒ビール。


そして夕方には、海へ夕日を見に。


そんな贅沢な生活を半年ほどしていたとき、一本の電話が。
その電話で、本来の目的を思い出す主。

ダーウィン…

オーストラリアに来て6ヶ月。
ここでこいつともお別れでした。

やっぱり続きます…

端折って端折ってこの長さ。
文才があれば本が書けるんちゃうか?とも思いますが…


事前に下調べをすることは、大事なこと。

何を食べようどこに行こうと考える、その時間がまた楽しい。
遺跡や建造物なんかは、歴史など知識があったほうがより深く楽しめる。

反対に、現地ではやってはいけない習慣、近づかないほうが良い地域など確認も大事。


ですが今回の渓谷のように、存在すら知らなかった場所にたどり着き、そこで経験したものというのは言葉にならないもので。
本当の感動というのは、自分の知識や想像を超えたところにある、そんな風に思います。


ということでオーストラリア編、続きます。
次回こそはダーウィンの海…目指せるかな…?



Bootleg Brewery
今でも輸入してでも飲みたい、飲んでほしいビール。
もちろんその時の状況、思い出補正もあると思うが、人生で一番うまかったスタウト。

写真は…ない。
みなさん自身で確かめて。