どんな旅がしたいですか?
どんな方法が理想的ですか?

一ヶ所沈没タイプや、とにかく多くの場所に行きたいタイプ。
宿泊費をできる限りセーブして、食事やお酒を楽しみたいタイプ。
お金を出してでも、時間を節約できる移動方法がいいタイプ。


ちなみに主の場合は、以前にも書いたように周囲に流されていくタイプ。
誰かに誘われてついていくこともあれば、目に入ってきたものを食べる。
目の前の信号が赤になれば、青になった方向に歩いて行く。

もちろん、意志に反して変更を余儀なくされたこともしばしば。
アクシデントが、結果として良い方向に向かうことも…


途上国だけではない、先進国でもよくあること

よく「日本の交通はすごい」と聞く。

定刻通りに出発し、定刻通りに着く。
1分でも遅れようものなら、「遅れて申し訳ありません」とアナウンスが入る。

ほとんどの駅やバス停は目立ってわかりやすく、時刻表もある。
よほどのことがない限り、信頼できる。


だが他国ではそれが通用しない。

バス停と指定された場所はただの道端、同じバスを待っているであろう人間とお互いに、「ここで合ってるよな?」と確認し合うことや、
持っているチケットには○○時発と書かれているのに、6時間経っても列車が来ず、係員に聞いても「わからない」と言われることも。

列車やバスに行き先が書いておらず、聞かないとわからないなんていつものこと。


ただこの日は違った。
バスターミナルがあり、バスにも行き先が書いていた。

安心して目的地に到着するまで寝ることができる…はずだった。

無いはずのパスポートチェック

ドイツ・ミュンヘン、夜の23時ごろ。
この街にはバスターミナルがあり、そこでオーストリア・ウィーン行きのバスを待つ。

このときはEurolines Passという30日間乗り放題のパスを使い、ヨーロッパの旅の途中。
ただ乗り放題とはいえ事前に席の予約と発券が必要であったため、
日中のうちにこのバスターミナルに出向き、出発時間と場所も確認していた。


ビール工場を数件回りビールを楽しみ、町外れのカフェで夕食も済ませ良い気分で待っていると程なくしてバスが到着。
バスには「Sofia via Wien / ウィーン経由ソフィア行き」とある。

運転手が客の荷物を積み込んでいたので、「このバスで間違いないよな?」と聞くと、「このバスは満車だから次に来るバスを待ってくれ」と言われた。
「今日は多いんやなー」くらいにしか思わずそのバスを見送ると、数分で次のバスが。

このバスにもSofiaの文字があったので、チケットを見せて確認の上乗車。
隣に座るおっちゃんと仲良くなり、会話をするものの消灯となり主も寝ることに。
このおっちゃんとの出会いが重要だったとはつゆ知らず…



どれくらい時間が経っていたのか定かではない。
おそらく4〜5時間走っていたのであろう。

制服を着た人間に起こされ、「お、到着したかな?」と思ったのだが違った。
国境を越えるのでパスポートチェックだった。

文字通り『キックアウト』

国境を越えるのだからパスポートチェックは当たり前、そう思われるかもしれない。
しかしここはヨーロッパ、「シェンゲン協定」というものがある。

シェンゲン協定

ビザが必要であっても無くても、滞在可能期間は国それぞれで変わります。
ですが、このシェンゲン協定に加盟している国々は、「加盟国内で何日以内滞在可能」となり、出入国審査は最初と最後の国だけになります。

ドイツもオーストリアも加盟国、出入国審査は通常ありません。


注:情勢により抜き打ちや一時的に審査があることもあるそうです。



寝ぼけた頭でも違和感に気づき、運転手に確認すると衝撃の発言が…


『今スロベニアを抜け、クロアチアに入ったとこや。何?ウィーンに行く?このバスは行かんぞ?』(主意訳)

『っていうか、なんでお前乗ってんねん?バス違うからここで降りろや』(再度主意訳)


ということで、ハイウェイの道端で降ろされ預けたバッグも放り出される。

行くも知らぬ国、戻るも知らぬ国

白々と夜が空ける中、ヒッチハイクかなーとも思うがなんせクロアチア。
このときは来るつもりではなかったため、全くアテがない。

少し悩んだ結果、国境に戻り事情を話して相談。
「大きい街はどこが近い?」ということでスロベニアに再入国することに。

なんせ持ち合わせの現金が15ユーロほど…ATMのある街に行くのが最優先と考えた。


タクシーを呼んでもらい、近くの駅のある町まで。

残り4ユーロほど。
誰もいない駅で、駅員の出勤を待つ。

「しかし国境でも聞いたけど、スロベニアの首都って何て発音したらええんや?」
「ってか、残金でどこまでいけるんやろか?」
などと考えていると、ちらほら人が来だした。

来るつもりのなかったスロベニア、いい国だった

どうせならと数日間滞在。
その後イタリアに抜けフランススペインと西へ、そして2週間遅れでウィーンに到着。

このことがキッカケにもなって、東ヨーロッパにも目が向くことに。
そして東ヨーロッパの旅が一つのハイライトになる…のはもう少し後の話。


ちなみに、未だに正確な原因がわからない。
最初のバスがウィーン経由ソフィア行き、乗ったバスはソフィア直行やったのかな?

それよりバスの運転手、俺乗るときにチケット見せて確認したやろ!

バス降車時や国境でも一悶着…とここでは書ききれない事態もありましたが、
アクシデントが、旅を良くも悪くも思い出深いものにしてくれるもんで…

ここまで読んでくれたのなら、せっかくなんでヨーロッパの地図を見てください。

主がバスに乗ったミュンヘン、目的地だったウィーンの場所。
降ろされた国境、スロベニアとクロアチア。

そしてSofiaはどこなのか…気づかなければどこまで行っていたのか…



最初に色々と書いていたが、「旅はこうじゃないとダメ!」なんてものはない。
人それぞれ、みんな違う。


ただ一つ、必ずしないといけないこと。



『家に帰ってくる』



やないと、おもろい話を誰にもできんもんねー。