とある国での出来事。
深夜着だったために大きめのホテルしかスタッフがおらず、中に入る。
安くないがもう日もまたいでおり、交渉しようにも他が空いていないのでokすることに。
ドルで値段を言われたので、ドルで支払う。
笑顔で受け取った瞬間、ドルを破り捨てられた。
「ここでは現地通貨か日本円しか使えない」と。
カウンターから身を乗り出し、テーブルに捨てられた札を奪い返すと破れていない。
半分に折ったお札を2枚持ち、勢いよく「フリ」をしただけ。
見た目ちゃんとしてるホテルでも、こういうことをするヤツがいる。
今回はそんな国でのお話。
知らない人には着いていかない。いつもなら…
インド・コルカタ。
いつもの通り、街を歩いていると知らないヤツが声をかけてくる。
いつもなら無視して歩き続ける。
「仲良くなった人と遊びに行ったら、お金を取られた」
これくらいなら、日本でも聞く話。
だが海外では、それ以上の被害に会った話がいくらでもある。
周りに流されて旅をしていたと言ったが、こういう人間とは関わらないようにしていた。
だって怖いやん?
ただ、この日は立ち止まってしまった。
何故かは自分でもわからない。
16時間かけてたどり着いた場所
甘すぎて苦手なチャイを飲みながら話していると、「明日実家に帰るが、お前も着いてこないか?」とのお誘い。
今改めて考えても、乗るべきやない誘い文句。
でも、主にしては珍しく行くことにしてしまう。
たぶんイライラしてたんだと思う。
雨季で蒸し暑いし、美味しいメシにも有り付けない。
何か違うことがしたかったのだろう。
翌日の15時、どこ行きなのか全くわからないバスにそいつと乗りこんでいた。
何時に到着するのかもわからぬまま。
屋根も水道も電気も無い家、周りには水田とサトウキビ畑の集落
記憶では朝の6時頃、どこかの道沿いでバスを降りた。
そしてそこから、水田の間の泥濘みを歩いて行った。
どれくらい歩いたか覚えていない。
何度も足をとられ、パンツがドロドロになったころに集落が見えてきた。
そいつと出会いバスに乗るまで、そして見送られながら乗ったバスで大きな街まで行った記憶は残っている。
だが実は、ここでの滞在中のことは断片的にしか覚えていない。
手押しポンプで出した鉄臭い水でシャワーを浴びたこと。
裸で浴びていたら、パンツは脱ぐなと怒られたこと。
(周りの家の屋上から丸見えだから当たり前だったが…)
そいつのお母さんが作ってくれたチキンカレーが、めちゃくちゃ美味かったこと。
近所の人が出してくれたヤシから作ったお酒が、不味くて飲めなかったこと。
木を編んで作った硬く小さいベッドに、男二人で寝たこと。
ラマダン時の日没の食事、みんな腹が減っているはずなのに主にも分けてくれたこと。
そして、子供達が楽しそうに駆け回っていたことくらい。
この写真を撮った直後、みんなと一緒に後ろに映る川に飛び込んだ主。
流石に「お前はやめといたほうが…」と止められたが、気持ちよかった。
蒸し暑すぎる、シャワーを浴びてもスッキリしない。
泥濘みで足はドロドロ、洗濯もできない。
みんな飛び込んでいる、気持ち良さそう。
そんな安易な考えだったのかな。
川の色がどうとか、あまり考えなかったような気がする。
少しずつ思い出された記憶
家の屋上でのんびりしたり近くの町で観光したり。
子供とドロドロになって遊んだり。
数日間の滞在後、「明日ここを立つよ」と伝えると「最後は何が食べたい?」と。
チキンカレーをオーダーすると、目の前で鶏の首を落とすところから見せやがった…もとい、見せてくれた。
楽しかった!とは少し違うが、これまでの旅とはまた違った経験。
一応最後まで、「金を奪われるかも…」と覚悟はしていたが…
そして別れの日、またしても行き先も時間もわからないチケットを買わされる。
お礼には少ないが、喫いかけのタバコの箱に少しお金を入れて渡した。
数時間バスに揺られてついた街、これまた地名を覚えていない主…
駅でチケットを買おうにも、路線図も時刻表もあるわけがない。
なんとなく思いついたので、ムンバイ行きのチケットを購入。
そのチケットに書かれた到着時間を見ると…
手がかりかと思われた『DHARMUCHAK』
この記事を書くにあたり、写真を確認しましたがほとんどありませんでした。
「ラマダン中だから大人の写真は撮らないでくれ」と言われた様な記憶が出てきたので、気を使ってあまり撮らなかったのだと思います。
もちろん当時、何度か地名をたずねましたが、なんせ聞きなれない言語で覚えられず。
出会ったヤツの連絡先も今はもうどこに行ったか…
『二度と行けない』というのは、そこが無くなってしまった訳ではなく、もう一度行こうにも手がかりが全く無いからなんです。
かろうじて何かの標識を写した写真がこれ。
ネットで調べると、残念ながら地名ではありませんでした…
貴重な経験、でも運がよかっただけ
この集落を後にした直後、熱にうなされながら列車に乗った記憶が辛すぎて、主にとってはあまり良い記憶としては残ってなかったんです。
おそらく原因は、ドブ川で泳いだこと…だってところどころ泡立ってましたもん…
ですが、改めて文字にしてみるとええ出会いやったんやなー、ええ経験させてもらえたんやなーと思います。
別れ際には、「半年後に妹の結婚式があるから、またインドに帰ってこい!」と言うてくれたそいつ。「今はラマダン中だから酒は飲めないが、そのときに一緒に飲もう!」と。
…あれ、あんたムスリムやんな?笑
(この数年後に、一緒に働いていたムスリムのモルディブ人に聞くと、「own rules / それぞれのルールがある」とのことでした。)
イマイチ盛り上がりに欠ける話になってしまいましたが…
正直なところ、この件は事件などに巻き込まれてもおかしくない行動だったと思います。
「自己責任だから」と言って行動する人もいますが、何かあった場合は本人の意思に関係なく必ず周囲の人間に影響が出ます。
ときには「国」が動くことになる可能性も否定できません。
無謀や無茶な行動をして、武勇伝を作るのがバックパッカーじゃない。
旅中では、命をかけるべきではないと主は思います。
でも、リスクの一歩先に面白いものがあるのも事実。
だからこそ「このマネは絶対にしないで」ではなく、「おすすめはしません」です。