ハイウェイを西に逸れた先

これまで大きくルートを逸れずに走ってきたが、ここは色々な意味で外せない。
900kmほど、数日間の寄り道。

もちろん目指すは『へそ』。


South AustraliaとNorthern Territoryの州境。
ボケっと走っていると見逃してしまうくらい、何もない場所。

町もない、交差点もない、人なんて歩いていない。

あるのは延々続く地平線と、辿り着ける気がしない遠くに見える山。
時折すれ違う巨大3連トラックと、真っ黒に日焼けしたチャリダー。

そんな砂漠地帯をただひたすら北上していく。


この日も雲一つない青空、影になるところもなく日光がジリジリと刺してくる。
だが乾燥した気候のため、クーラーを付けずとも窓を開けているだけで気持ち良かった。

Northern Territoryに入り、110km/hから130km/hに。
飛ばそうにも、野生生物がいつ出てくるかわからない。
このエミュも首を伸ばせば2mを超えていた。

朝クーパー・ペディを出発し、ハイウェイを走り出したのが5時間前。
ガン(Ghan)という地名らしいが、あるのはガソリンスタンドとモーテルだけ。

ここでこの日初めて通る交差点を左折する。
そしてまた、同じ風景の続く道をひたすら西に進んでいった。

250kmは『近い』。

第一声は、「これ、見たことあるわ。」

「あれがそうじゃないんか!?」
「いや、なんか違うんちゃう?」
「でも道が向かってるからそうっぽいで」
「そうであっても、そこまであとどんだけかかるんかな…」

ここを通るほとんどの人がするであろう勘違いを、主と相方もしてしまう。
だがその紛らわしいものを通りすぎたとき、ついに見えてきた。

ポスター写真は、このビューポイントから撮られたであろう。
ちなみに、世界最大の一枚岩ではない。
『風の谷』の近くの巨石群、Kata Tjuta。
ちなみに、ナウシカのモデルでは無い。

せっかくなんで日の出を見ていこうということで、1泊することに。


そしてその夜のビアタイム、珍しく相方が翌日のルート変更を申し出てきた。

さらに300kmの寄り道。
翌日は大きな町アリススプリングスまでと思っていたが、焦る旅でもない。

朝日を見て、そこへ向かうことに。
そしてこれが、主の旅の中でも最大級の感動になる。


…朝日の写真は撮れなかった。

「キングスキャニオンにも行ってみたい」

改めて確認すると、この日はかなり暑い日だったようで。
何の装備もなく、ポケットに500mlの水筒を入れただけで行こうとする二人。

早速すれ違ったガイドであろう人間に、かなりの勢いで怒られる。
水筒なら持ってるぞ!と見せたら、呆れた顔をされた。


とはいえ、4Lのポリタンクを持っていくわけにはいかずそのまま出発。
まあ、まだギリギリ乾季だったので…


本当にギリギリだったわけで…

「3.5時間って書いてるし、行ってみるか」と軽い気持ちで登って行くことに。

正直、全くこの場所のことを知らなかった。
まあそもそもオーストラリアで知っていたことは、グレートバリアリーフとエアーズロック、そしてワインが有名なことくらいだったが…


初めて来たにもかかわらず、「見たことあるな」と呟いてしまった。
もちろんバケツリストには入っていたので、「来れたな」という思いはあったものの、それくらいエアーズロックでは感動はなかったように記憶している。


対照的にこのキングスキャニオンは、「知らなさすぎた」のが良い方向に転んだ。
上の提案がなければ、完全にスルーして進んでしまっていたところである。


—–
キングスキャニオンの写真はあげないでおこうと思います。
写真では伝わり切れない。
何より「全く知らずに行ってよかった!」と言う本人が見せてしまうのもどうかと。

もちろん検索をすればすぐに出てくる有名な観光地。
でも、『主にとっては』数ある旅の記憶の中でも、最大級の感動でした。

ハイウェイに戻り北上、あとは海を目指すだけ

どいてください。
こっち見ないでください。

キングスキャニオンから戻り、出発するとき。
地図を見ると、「ここに道あるやん。」と。


『アウトバック』
地図に書かれていた、一番細い線。

聞いてはいたが、まあ行って見ようということで進んでみた。
そして、その道を10mほど進んだところで車を停める主たち。

未舗装な上、轍が乾燥して固まっている。
普通車で走れたもんではない、しかも何百kmと続いている。


諦めて来た道を戻り、ハイウェイに辿りついたところで日没。
モーテルに宿をとり、閉店作業中のレストランで残っていたサンドイッチを頬張った。

あとは1,700km走るだけ。
特に寄る場所も考えていない。


なんとなく終わりを考えながら、ベットで横になっていた。

一泊したが、出会えなかった。
登ろうとして、足を負傷した相方。爪が…

この道を通る限り必ず通る町、キャサリン。
仕事探しで彷徨っているときに滞在していた町である。

そしてキャサリンといえば渓谷。
これだけは絶対相方に見せてやりたかった。

前回とは違うルートを選ばざるを得なかった。
もちろんこっちはこっちで凄かったが。

…が。

北上したのもあったとは思う。
だがこのキャサリンに入った翌日から、異常に蒸し暑い。

呼吸さえするのが苦しいくらい。
そして尋常じゃない数のハエ。

そう、雨季に入ったのだった。


前回2時間ほどかけて進んだトレイルは諦めるしかなく、30分のルートに。

「絶対ええ場所やから行こう」と連れて行った手前申し訳なく。
「川が温泉やねん、そこもええで」と連れて行くも、増水で入れたものではなかった。


あの日、あと数日遅かったらどうなっていたことか。

オーストラリア入国から254日目

スチュアートハイウェイは残り300kmと少し。
もう1泊してキャサリンを楽しむつもりだったのだが、「行こうか」と。


ダーウィンの海目前の椎名誠さんは、どういう気持ちだったのだろう。
トラファルガー広場まで歩く猿岩石は、どういう気持ちだったのだろう。


そんなことを考えながら、北へ。

ダーウィンの海を目指して。

残念ながら、ここにきて曇り空。
だが主には輝いていた。

旅はまだまだ終わらない

長々と5回も書いてしまった、オーストラリア。


この車の旅も、オーストラリアの滞在も、ここで終わったわけではありません。

相方の仕事探しのため、西オーストラリアに戻りカナナラという町へ。
そして更に東へ抜けてケアンズへ。

そのケアンズで数ヶ月滞在中に、緊急連絡があったために帰国しました。

そして3年後にオーストラリアに戻るも滞在5日で出国、バリへ。


書き出すとキリがないのでここらへんで終わります。
一応『ダーウィンの海を目指して』だったんでね。



購入してから20,000km以上走ってくれた真っ赤な相棒は、クリスマスの夜に…
そのお話はまたいつかできればと。


以前から『知らない』が感動を…と言ってきましたが、
主にとっては、このキングスキャニオンでした。

もちろん、これまでに知らなかったために行けなかった、知らなかったために楽しみ切れなかった場所もたくさんあります。
でも「行って初めてわかった」ことって、旅の一番の楽しみかなと。


映画もドラマもRPGも、ネタバレを読んでしまうと面白さ半減してまいますやん?

「あれか?」の犯人。
「ハンバーグ…」との発言したのはもちろん…